ハイクオリティーな違法フリスクを作りたい
皆さんはネット掲示板で昔流行った『フリスクコピペ』というものをご存知でしょうか。
渋谷でアホそうな若者に「凄いクルから気をつけてよ」ってラップで包んだフリスク5粒を3千円で売った。
昔のコピペは令和になった今でも面白さが色褪せません。まだまだ面白いし、思い出し笑いとかもしちゃう。
私はその中でも特にこのフリスクコピペが好きです。しょーもない悪戯が短文に纏められていて、読んでるこっちがアホそうな若者を想像しちゃうんですよね。
正直な話、今の時代にこれをTwitterとかに書いても嘘つき扱いでボコボコにされた挙句に通報まで行きそうなのが残念なところです。これが時代の流れってやつなのでしょうか。令和許せねぇ……
無常にも時が過ぎていき、私もアラサーの立派な年齢となってしまいました。
私が初めてこのコピペを読んだのが多分18歳なので、フリスクコピペとも10年の付き合いに突入することとなります。
じゃあ10年で何か変わったか⁉と聞かれれば、私自身に変化や成長があった訳ではありません。せいぜいアホそうな若者に毛が生えた程度の変化でしょう。
面白さの変わらないコピペと、精神年齢の変わらない私。
しかし流石に10年の時は長かった。
初見では気がつけなかったことも5年あれば違和感に変わり、10年あれば確信となります。
私が10年かけて到達した、フリスクコピペの疑問点。
それは………
ラップで包んだフリスクじゃ騙すの無理じゃない!?
写真を撮ると一目瞭然なのですが、とにかくフリスクにしか見えない。
「白い錠剤」「刺激的な味」「手作業っぽい包装」という要素から、まるで危ない薬物かのような妄想を促しますが、フリスクはどんなに取り繕ってもフリスクです。
ラップ包装も雑さを表した記号として活躍していましたが、現実では足を引っ張っていますね。ただの悪ふざけにしか見えません。
フリスクコピペは読者個人の想像力によって説得力を持たせていたのでしょう。書いた本人にそこまでの狙いがあったかどうかは別ですが。
自分でフリスクをラップで巻いたら想像とのギャップにダメージを受けました。
ただまぁラップで巻いているのが安っぽさを強調しているだけの気がするので、そこを工夫すれば危ない薬物らしさが出ると思うんですよね。
どうせだったら再現してもがっかりしないクオリティーの違法フリスクも見てみたくなるものです。
こいつとも10年の付き合いですし、ここは私がバッチリ危険ドラッグっぽいフリスクに仕上げてやりたいと思います。
せめて渋谷のアホそうな若者くらいは騙せるようにしてやりますよ、ガハハ!!!
危ないフリスクを作成する準備として、人生初めてフリスクを箱買いしました。
一箱12ケース入りでお値段2700円ぐらい。期せずして私自身がフリスクに1000円札3枚を支払うこととなります。原作再現みたいでちょっとテンション上がった。
普段は手の平に数粒のせるだけのフリスクを小鉢に入れると、なんだか別のモノに見えてきますね。
実はこの発見が後々活躍していきます。
フリスクを怪しくする小道具に加え、ドライアイスを購入しました。
保健体育の教科書に載ってた危険薬物の写真って、みんな煙がモクモクした写真じゃありませんでした?
なので煙で包めばフリスクもヤバさを演出できるかなーと考えて買ってみました。
最近ではスーパーにドライアイスを置かなくなったので、町のドライアイス屋さんみたいなところで購入。
お店の人から使用用途を聞かれたのですが、正直に「煙で遊ぶために使います」と答えたら笑われました。恥っず…
①チャック付き小袋
私の短く浅い人生では現物を拝見したことがないのですが、そういう違法薬物ってチャック付きのビニール小袋に入ってることが多いイメージなんですよね。
映画とかだと透明の小袋に粉とか草とかが入ってて、闇の売人から一袋いくらで取引するシーンをよく見ると思います。
コピペのほうはラップの安っぽさが邪魔をしていたので、ここを変えるだけで一気に“本物”となるんじゃないでしょうか。
そんな期待を込めて写真を撮りました。
いやどう見てもフリスクだわ
包装変えたり背景を赤にしたり煙漂わせたりしたけど関係ないわ。
私だって一回で完成すると思ってなかったけど、ここまでフリスクのフリスク感が強いとは思わなかった。
フリスクと形状が似ているお菓子として森永ラムネとヨーグレットも撮影中のおやつとして購入しており、こちらもフリスクのついでに怪しい写真を撮ってみたのですが
どうやらフリスクは形状ビジュアルから商品を連想させる力が強く、タブレットを剥き出しで置いていてもフリスクが思い浮かんでしまうようです。
逆に森永ラムネやヨーグレットはパッケージや味のイメージが強く、タブレット単品の写真では商品に結びつかない。
危険薬物に対する忌避感の元は「よくわからないモノ」に対する恐怖なので、見慣れたフリスクの形状が安心感を与えてしまってるのでしょう。
フリスクのイメージが浸透した現代社会でアホそうな若者を騙すことは難易度が少々高いようです。
②小さな小瓶
チャック付きの小袋に次いで薬物指数の高い包材として名高い小瓶、次はこれを試していきます。
正直な話、ビニール袋ではラップと大差なかったのでコイツが本命ではあります。
映画とかでも小瓶に詰めた薬物は小瓶での登場が多いです。光源にかざしながら意味深な顔で小瓶を睨みつけるイケメン俳優のシーンなんて何回見たかわかりません。
ビニール袋はちょっとした傷で中身が漏れる危険性もあるので、ちゃんとした硬度の小瓶は危険薬物向けな入れ物だといえるでしょう。
残念ながらフリスクです
小瓶が錠剤を映していたり小瓶の無機質感が出ており、ドライアイスの扱いも上手くなってきましたが、フリスクだけはどうしてもフリスク。
本当にぱっと見の雰囲気だけは仕上がってきたのに、観察のピントを錠剤に合わせていくと「………フリスクでは?」という疑問が浮かんでしまいます。フリスクの自力が高過ぎる。
でも知ってた。ぶっちゃけこうなるのは知ってたもん。
さっきのビニール袋の時点でフリスクはどう足掻いてもフリスクであることはわかってましたよ。
ここからはフリスクのフリスクらしさを消していくことが重要視されるのです。
そこで生まれたアイデアの一つは「数を増やす」というもの。
先ほど小鉢に入れた一箱分のフリスク写真の通り、フリスクは大量に集まるとフリスク感が消えていきます。
ようは普段見ない量のフリスクになれば、脳内のフリスクイメージと結びつかずに怪しさを手に入れることができるのです。
今まではコピペに倣って5粒1包みを信条としてやっていきましたが、その拘りが仇となるならば改変もやむなしでしょう。
文字から写真という変化に伴い、断腸の思いで原作改変致します。メディアの違いを理解せよ!
ぱっと見のフリスク感が無くなりました
本音を言うとまだまだフリスクだけど、いい線まで近づいて来た感はある。
やっぱ大量のフリスクはフリスク感を消す役割を持ってます。私の推理は間違いではありませんでした。
完成には程遠いけど、方向性は間違ってなかったことを確認出来ただけでも万々歳としましょう。
策はまだあります。
次に試すのは同系統の茶色い小瓶です。
フィクション作品において危険薬物に茶色い小瓶が使われることは稀です。押収済みのブツを検査しているシーンとかぐらいでしょうか。
それだけに良いほうの薬物が入っているイメージがつき纏います。
全くないとは言いませんが、比較的珍しい危険薬物の包材でしょう。
ここでのポイントは色です。
フリスクは持ち前の白さから自分らしさを出していきます。
ならば逆に包材によって色を奪ってしまえば良いのではないでしょうか?
数の増加と小瓶の色でフリスクのアイデンティティを打ち砕く。これならアホそうな若者も買ってしまうでしょう。
新ビオフェルミンS錠になっちゃった
茶色の小瓶が薬らしさを出しちゃって、小粒の錠剤が新ビオフェルミンS錠に見えてしましました。
完全に誤算です。
未知の存在に恐怖心を抱くというロジックで計画を進めていたのに、フリスクよりも安全安心なものに近づいてしまうとは何とも不思議。
新しい項目に「薬らしさを消す」を増やしましょう。
蛇足ですが
この撮影中におやつで食べていたカリカリ梅があったので、軽くスライスして茶色の小瓶に詰めてみたところ
正体不明の小瓶ができました。
中身がわからな過ぎて怖いし、初見ならビビると思います。
普通はカリカリ梅をスライスすることなんてないですし、茶色の小瓶に詰めることもないので、中身の推理は不可能と言って良いでしょう。
自画自賛で申し訳ないが小瓶の正体不明さがたまらん。ずっと眺めてても全然わかんないもん。
これで今までのロジックは間違っていないことが証明されました。悪いのは全部フリスクなんですよ。
論理の正しさを証明したところで取り出したるはコルク瓶。
錠剤、というよりかはドライフラワーなんかを入れてそうなオシャレ瓶です。普通はフリスクなんて一生入れる機会もないでしょう。
その常識を逆手に取り、フリスクのフリスク感を消すことができるのではと予測しました。
皆さん想像できます?このオシャレなコルク瓶に錠剤が入ってる状態を。
難しいですよね?そこなんですよ。
絶対にマッチしないからこそフリスク感が拭えてヤバい錠剤に見えてくるのではないでしょうか。
そう考えて撮れた写真がこちらです。
完全に失敗しました
これはもう完全に失敗です。
コルク瓶とフリスクの相性が最悪過ぎて、両方浮いちゃってる。違和感しかない上にフリスクはフリスクらしさ出してる。最悪。
なんかもうヤラセ感が臭い。見せるために用意しました感が出すぎて、闇のマーケットで売ってるような緊迫感が一切ない。
ちょっと下に水をこぼして無機質感を消そうかと努力しましたが結果は実らず。
まさかコルク瓶でここまで失敗するとは思いませんでした。
ビジュアルの説得力が皆無だと白けてしまうのも重要なポイントなのでしょう。
けっこう自身あったのに。
再び蛇足ですが
こんなこともあろうかと用意していた切り干し大根を入れてみたところ
バッチリヤバい草になりました
③全ノウハウ合体技
ここまでの実験で見えてきたものがあります。
フリスクの危険性を高める上で一番大事な要素は“色”で確定しました。
茶色の小瓶の時は失敗しましたが、やはり白色をそのままにしておくとフリスク感がどうしても消せません。
なので包材ではなくフリスク自身への着色を試みました。
写真は食用色素にて染め上げられているフリスクです。
スーパーでは手作りデザートの棚に陳列されていた食用色素達も、まさかフリスクを着色することになるとは思ってもみなかったでしょう。
フリスクは色素を吸収するような素材ではないので、濃い色素液に漬けた後に水分を軽く拭って乾かすという手法を取りました。
本当は絵の具みたいな水分の少ない着色料で塗りたかったのですが、そこはフリスクも食べ物なので我慢です。
ちなみにフリスクは水に溶ける性質を持っているので、着色作業はスピーディーに行わなければなりません。でないと溶けてタブレットの形が歪むので。
着色後はエアコンの風に当てたりして水気を飛ばし、あとはカラカラになるまで放置という手順。
そうして出来上がったのがこちら。
違法薬物の写真が撮れました
色問題さえクリアできればポテンシャルはあると踏んでいましたが、まさかこれほどとは思いませんでした。
というかこの薬ありますよね多分?ドラッグに詳しくなくてわからないんですが、これに近いやつ絶対ありますよね?保険の教科書とか学校のセミナーみたいなやつで見た気がするもんこれ。
特にこの色が上手く塗れました。
フリスク自身が着色を拒むので、付着した液を乾かすような感じで色付けしたことが幸いし、粉っぽいカラーリングとなりました。
フリスク感を消しつつも、毒々しい狂気さも再現出来ています。
そしてこちらが包材を二重にしたバージョンです。
チャック付き小袋に小瓶をプラスすることで、厳重さを強化しました。両方の包材が透明であることが写真の淡泊さを出していたので、重ねてしまうことで透明さを半減することに成功。
実際に危険薬物を取り扱うなら容器を二重にするのも頷けますし、危険物“らしさ”が出せたのではないでしょうか。
残るはコルク瓶の時に判明した状況の説得力ですが、こちらにはエピソードを追加することで改善を行います。
一見は何の変哲もない箱。
素材自体はやや高級そうですが、人へのプレゼントとしてなら浮くこともないでしょう。
しかし中身を空けると…
法律上よろしくないプレゼントの完成です
いやー長かった。
ここまで来るの本当に長かった。
でもこれなら渋谷のアホそうな若者ぐらい簡単に騙せるでしょう。私は関西人なので渋谷がどんなところか知りませんが。
ここまでお手本のような違法フリスクを出されたら、誰だって騙されて3000円ぐらいは出してしまいます。(買っちゃダメですよ)
④まとめ及び注意点
要点は色・包材・説得力なので、自分もやってみようという人は参考にしてくださいね。
理論は完璧ですが加工についてはまだまだ手の加えようがあると感じているので、君だけのオリジナル違法フリスクを作ってみては如何でしょうか。
あとこれは常識ですが、これを読んだからって着色したフリスクを二重包材と箱に入れて売ったりしないで下さい。
フリスクコピペはインターネット内のなんちゃってエピソード、私の写真はインターネット向けのお遊び撮影です。アホそうな若者は絶対に実行しちゃだめですよ。
コピペの疑似再現のつもりがギリギリ騙せそうなクオリティにまで昇華してしまったので、本当にやめましょう。
もちろん本物の違法薬物なんて御法度ですよ。まっとうな道を歩みましょう。
悪いことやっても良いことなんて何一つありませんから!
余談
今回の撮影に使ったフリスクを一つにまとめて、その日の晩御飯として全部食べたのですが
夜はサイケデリックな悪夢を見ました