身長175㎝と名乗る174㎝を見破るたったひとつの冴えたやりかた
私の身長は176㎝です。
突然の自慢で大変申し訳ないのですが、紛れもない事実です。日本男児達が憧れる高身長の基準値【175㎝】を1㎝超える肉体を、恐れ多くも保有しております。
背の順では常に後方、女の子には背の高さを褒められ、ライブ会場でも前席に視界を邪魔されないというメリットだらけの勝ち組人生を満喫中。
少しおっとりしている実家の祖母は、私が顔を見せるたびに「また背が伸びたねぇ」と褒めてくれました。
そんな頻繁に背は伸びないので、こちらは完全に祖母の気のせいなのですが………
このように私は高身長人生を満喫しており、自分の身長が大好きです。身長ではあまり負けないという部分はちょっと自慢でもあります。ふふん。
学生時代からこの精神を保ち続けながら大人になってしまったので、多分死ぬまで高身長の優越感に浸りながら生きていくんだと思います。
そんな176㎝の身長によって絶対的なアイデンティティを確立している私ですが、実は数年前からとある試みを実行しています。
それは、「誰かに身長を聞かれたら、175㎝と答える」という実験です。
理由はいろいろあるのですが、簡潔に言うと復讐という言葉が一番近いと思います。
私が身長176㎝になる少し前、私は175㎝でした。
あまり具体的には覚えていないのですが、16-20歳辺りの5年間ほどを175㎝で生活をしていたと記憶しております。
当時の私はたかが175㎝で高身長面をしており、言葉には出しませんでしたが175㎝未満の男子生徒を少しバカにしておりました。若気の至りとは恥ずかしいものですね。
そんな当時、私はふとした疑問を抱きました。
おかしい。この世には175㎝の男が多過ぎるのです。
考えてもみてください。175㎝が高身長男性の基準値として社会から認識されているのは、それだけ基準点に到達することが困難であるからです。
ですがどうでしょう、世にいる男たちの自己申告身長は軒並み175㎝なのです。
この現代社会の矛盾点から導き出される結論は一つ。
嘘つきがいるのです。身長が174㎝や173㎝なのに、1-2㎝サバを読んで175㎝に扮する偽物高身長が混じっているのです！！！
何故か私より僅かに目線が低い175㎝の男たちは、1-2㎝の嘘を毎日更新していきます。己の身長が伸びない限り彼らの嘘は真とはならず、肉体の滅びが彼らを救済するまで世界に嘘をつき続けなければなりません。
何故、彼らはそんな悲しい嘘を重ねてまで高身長の見栄をキープするのでしょう。嘘で塗り固めた1-2㎝を守ることに、どのような意義があるのでしょうか。
有名な言葉に「人間の価値は見た目では決まらない！大切なのは中身だ！」というものがありますが、冷静に読むと身長に関しては言及がありません。(“見た目”という言葉からは顔の造形や恰好、清潔感などを連想させ、身長という意味は薄いと私は考察しております)
恐らく、どんな名言でも擁護不能な大きい溝が、174㎝と175㎝にはあるのでしょう。
今や176㎝の私には一生わかりませんが………
まぁ彼らの業については心底どうでもいいのですが、問題は私の身長が軽んじられた件についてなのです。
だってそうじゃないですか。せっかく私が天然物の175㎝を持っているのに、偽物がたくさん市場に流れたら天然物の価値が下がるじゃないですか！！！
学生だった頃の私は偽物高身長共に散々辛酸を舐めさせられ、176㎝になった今も思い出してムカムカしています。
そうして社会人になった今、偽物たちの嘘を炙り出して復讐しようという発想に至ったのです。
長々と語りましたが、これが今回の趣旨になります。
世に蔓延る「偽物の175㎝」探しは難航しました。
偽物たちが1-2㎝しか身長をサバ読んでないので、パッと見で判断がつかないことが主な原因となります。
せめて私自身の身長が175㎝のままであれば、自分を基準にして身長を測ることもできたのですが、偽物への復讐を思い立ったのが176㎝になった後なのでそれも叶いません。
1㎝上のステージから俯瞰する景色からは175㎝も174㎝も見分けがつかないという部分がボトルネックとなり、175㎝選別作業が至難となりました。
苦難の末に私が考え付いたのが、自分も175㎝と名乗って偽物たちと同じステージに立つというアイデアです。
偽物たちは1-2㎝しかサバを読んでおらず、嘘を特定することは難しい。しかし、私自身もサバを読めば1-2㎝の嘘に1㎝プラスすることができるので、身長が足りていない偽物を炙り出すことができるのです。
175㎝時代に偽物たちの行動を長期間研究し、そこからさらに身長が伸びた私だからこそ発見できた必勝法は、全ての虚偽身長報告を貫く神槍となります。
ここで勘のいい方なら、私の必勝法にとある疑問を持つのではないでしょうか。
「この方法だと本物の175㎝も偽物の疑惑をかけられるのでは？」
大丈夫、落ち着いて欲しい。
私の逆サバ読み必勝法は、身長を偽る偽物たちをまな板の上に載せるための策でしかありません。奴らを三枚おろしに捌く包丁は別に用意してあります。
想像してみてください。
男女６人ほどで談笑している時に、何かの拍子で女性から「みんな身長高いよね。何センチあるの？」と問われた時を。
そして１７５㎝と名乗った男が自分を合わせて２人いた場合を。
しかし２人の身長には僅かに差があり、並んで立つと自分の方が低いことが判明した状況を。
怖いですか？恐ろしいですか？残念ながらそう思ってしまったあなたの恐怖心こそが1-2㎝の呪縛なのです。
シンプルに考えてみてください。
身長１７５㎝の人間が身長１７４㎝の嫌疑をかけられたとして、何の不都合があるのでしょうか。
天然ものの１７５㎝にとって、疑われることは怖くないのです。だって測ればいいだけのことなのだから。
むしろ自分が１７５㎝の高身長であることに絶対の自信があるので、自分以外が異常だと判断することができます。
よって私が身長をサバ読んで隣に立っても「いやいや、○○さん(私)って絶対もっと慎重あるでしょ。僕でも１７５㎝ありますもん。」になるのである。
逆に１-２㎝身長をサバ読んでいる偽物は動揺します。びっくりするくらいわかりやすく動揺します。
175㎝帯で２㎝以上の身長差が生まれたことは彼らにとっても初めてなので、一目瞭然な身長差に混乱するのでしょう。
相手も１㎝ほど身長サバ読んでくるとは想像していなかったようです。アホですね。
さらに１７４㎝の偽物は自分の身長こそが間違っていることを知っているので、身長の話から自分を遠ざけようとします。
何とかして身長以外の要素から身長差が生まれる理由を生み出そうと必死に探すのです。
私が今まで聞いた１７４㎝の言い訳だと
・靴のソール部分の差であることを強調して逃れようとする
・髪の毛のセットによる印象の違いと言い張る
・俺の頭は坊主だからそう見えるだけだと主張する
・地面が坂になっているのではないかとホラを吹く
・むしろそっちが背伸びをしているのではないかと言って、相手を嘘つき扱いする
・「日によって身長は伸び縮みする」というのをTV番組で見たと謎うんちくを披露する
みたいなのが沢山ありました。
もちろんソールのせいではないし(むしろ相手はブーツだった)、髪の毛のせいではないし(私の髪は短髪)、坂もないし(建物内だった)、背伸びもしてないし(したら一目でわかる)、伸び縮みもしていない(これはよくわからない)。
背伸びを疑った彼は本当に惜しいところまで来ていたのですが、私の嘘が種も仕掛けもない天然由来のものであるという領域にはたどり着けませんでした。
私の身長を疑っておきながら、どうして自分の正反対の存在がいると予想できないのでしょうか。
このように一度１７５㎝のふるいに掛けた後、身長が高い私に対しての反応によって本物と偽物を再選別するという２段構えのロジックこそが、長年の１７５㎝研究の末に編み出した必勝法です。
今まではランダムな身長を目視のみで測っていたので１７５㎝の真偽がわかりませんでしたが、本人たちに１７５㎝を自称させることができれば１７５㎝(真)と１７５㎝(偽)の二択まで絞ることができます。
さらに相手との心理戦にもつれ込むことにより、目視よりも遥かに正確な判断を下すことができます。
この心理戦に勝つための情報アドバンテージこそが、私自身の身長サバ読みなのです。
私はここ数年、身長を偽り１７４㎝を探すゲームをずっとやっています。
ちなみに私は偽物を見つけた段階でスッキリするので、彼らの嘘を暴いたりはしません。
自己完結型の復讐なので社会にとってもクリーンです。
これを読んだ皆さんの中にボクわたし身長誤魔化してますよーって方がおられましたら、私の思考方法を是非参考にしてください。
上記が嘘を見破ろうとする人間の思考なので、これの裏をかけば誰よりも上手く身長を誤魔化せます。
かくゆう私も見栄を張りたい時には１７８㎝を自称しております。
嘘を“暴く側”だった時の思考法は嘘をつく時にも役立ちます。
みんなで一緒に１-２㎝身長をサバ読みましょう！
