焼肉を拗らせた自覚

焼肉には多種多様な“場”が存在する。

 


友人と川辺で肉を焼くバーベキュー、金額分の元を取るため躍起になる焼肉チェーンの食べ放題、女性にデキる男を魅せるための接待焼肉、仕事でお客さんに御馳走になっちゃう高級焼肉、焼肉を100%楽しむための一人焼肉……


どんな焼肉もみんな違ってみんな良い。肉焼くのが全員下手糞な泥沼焼肉すらもアリな焼肉だ。

 

 

そんな多種多様な場の中でも「親しい友人1-3人と個人経営焼肉店で好き勝手注文する焼肉」こそが焼肉界最強のナンバーワン焼肉だと私は考えている。

 

まず人間だが、これは親しい友人1-3人がベスト。食事中の忖度文化は嫌いじゃないが、焼肉は共同作業であることを忘れてしまってはいけない。
メニュー決め、肉焼き、網替え、ドリンク注文、皿配置の変更、タレと塩の区別、上手く焼けた時の「あーっこれ絶対旨いじゃん…」というコールなど、様々な作業を分担マルチタスクしながら肉を食べなければいけない。


作業をスムーズにこなすのはもちろんのこと、周りの失敗をカバーしたり得手不得手を認め合うことだって重要だ。
コミュニケーションコストの低さと情報伝達の精度を考えれば、自分含めて2-4人までの友人グループが最も効果的な人選である。
四人席にも座りやすいし。

 

次に店と注文方法。これは個人のエゴが出れば出るほど好ましい。
個人経営店のこだわった肉や一品物を眺めるだけでも楽しいし、限られた胃袋のリミットを考えながら注文していくのは快感だ。
(ちなみに私の言う個人経営店というのは、チェーン店10店舗未満ほどの地元に根付いた店を指しているつもりだが、もちろん例外も存在する。要は個人経営の香りが残っているかどうかが重要なのだ。)

 

そして注文は友人達であーだこーだ言って決めるのが良い。「俺はこの部位が好きだ」「このメニューだけは気になる」「お前らコレ食ったことある?神だぞ」みたいな会話がしたい。この絡みこそが肉の最高のスパイスなんだ。

 

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長々と語ってしまった後だが、私にはこの「親しい友人1-3人と個人経営焼肉店で好き勝手注文する焼肉」において、友人にやって欲しくない行動が一つだけある。
焼肉なら何でもありなんて恰好良いこと言った後で恥ずかしいのだが、どうしようもない俺の焼肉エゴを聞いてくれ。

 

 

 

ナムルの盛り合わせを注文しないで

 

 

 

いや、違う。別にナムルが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。
もやしも大根もゼンマイもほうれん草もみんな好き。なんなら全部食べられるナムル盛り合わせめっちゃ好き。肉が来る前にナムル盛りでビール飲むの大好き。

 

でもさ、ナムル盛り合わせってどうしても忖度オーダーとしての要素が強いじゃん?大人数、初対面、プライベートではない時なんかに周りの空気読んで注文するやつでしょ。

 

「親しい友人1-3人と個人経営焼肉店で好き勝手注文する焼肉」ではもっとエゴを出して欲しいんだよね。圧倒的な熱量を持ってエゴを晒して欲しいんだ。
「やっぱビールにはもやしナムルっしょ!」「箸休めに大根ナムル欲しいわ」って言って欲しい。今一番食べたいものを高らかに宣言して欲しいんだ。
意見をすり合わせた結果としてナムル盛り合わせなら問題ないが、最初からナムル盛り合わせは本当にやめて欲しい。萎える。

 

 

だって寂しいではないか。最高のメンツで好き勝手注文しようぜって時にナムル盛り合わせなんて。
条件反射みたいに忖度オーダーしやがって、俺たちに心を開いてないのかって感じる。
もちろん彼らにも悪気はないと思うんだけど、それでもやっぱり心の距離を感じてしまう。
人生で一番楽しい時に安全マージンを取ろうとするな。

 

 

焼肉ってもはや“会話”だと思う。肉を焼くスピードや網交換、そして注文一つ一つが参加者の意見になっているのだ。
「カルビはタレで注文するよ?」って聞いてきたらそいつは“カルビはタレ派の奴”というレッテルが張られるわけだし、網交換が早すぎる奴は“早漏”のレッテルが張られる。
でもそれって凄くない?自分の個性や弱みをさらけ出せる相手と場があること自体が奇跡だと私は思う。
だからこそナムル盛り合わせの注文は会話の拒否のように感じてしまうのだ。

 

 

だからやっぱり焼肉中は会話をして欲しい。言葉だけじゃなくて、焼きや注文で意見を伝えて欲しい。
焼肉を拗らせてしまったバカの独りよがりな願望ですまない。


でも焼肉ってエゴが一番のスパイスみたいなもんだからね。